MDB COLUMN

ビジネスを成功に導くための視野/視点の拡げ方(2018/10/29)

第6回 若き論客に学ぶ、という発想~その6

<本コラムの紹介>
 ビジネスを成功に導くためには、「いかに視野や視点を拡げていけるか」が極めて重要である。といっても、それほど簡単な話ではないことは皆さまもご存じの通りである。そこで本コラムでは、その方法論について、様々な考え方をお伝えしながら、紐解いていくことを目的としている。「他では読めない内容」となっているので、是非お楽しみいただきたい。



inc.5000から学ぶ示唆とは

今後のグローバルビジネストレンドを把握するための指標は複数存在する。いつの時代も定点観測は重要である。
ここ数年、発表のタイミングを心待ちにしている指標の1つが、アメリカのスタートアップサイトであるinc.による「inc.5000」である。急成長企業を把握するための指標の1つで、アメリカ版、ヨーロッパ版が毎年公開されており、非常に興味深い。
このランキングには、若き凄腕経営者が多数隠れており、面白い経営者を発見すると、Bloomberg等のメディアでインタビュー記事を探し、コメントを追うようにしている(長年の習慣)。まさに、突破口を見出し、新たなビジネスを急成長させた若き論客の智恵を垣間見ることができる。

■inc.5000 アメリカ版
 URL:https://www.inc.com/inc5000/list/2018

 2017年はeスポーツで知られるskillsが急成長率No.1であったが、2018年はどのような結果となったか…。サイトを見ていただくとわかるのだが、1位はSwanLeap(ウィスコンシン州)となった。

 URL:http://www.swanleap.com/

 2013年設立のスタートアップであり、AIを活用し、海運・陸運の輸送業の効率化を可能としたシステム構築で一気に成長を遂げた。 決して大きな企業ではないのだが(ランキング発表時:従業員49名)、同社のビジネスの仕組みから学べることは多い。

 今回のinc.のランキングを見ていると、以下のような気づきがある(ごく一例)。

1.Swanleapもそうなのだが、Logistics & Transportation関連企業がベスト10に3社ランクインしている。
→これからの時代を象徴している

2.消費財分野において、急成長を遂げている企業が想像よりも多い。

3.Advertising & Marketing分野の企業が健闘している。

等々。
 成長産業における「隙間」「間隙」を探している企業からすると、きっと垂涎のランキングデータだと感じるのは私だけであろうか…。皆様がそれぞれの視点で見てみることをお勧めしておく。

ヨーロッパ版は?

またランキングの毛色が違っていて、面白い。

■inc.5000 ヨーロッパ
 URL:https://www.inc.com/inc5000eu

 アメリカ同様、Logistics & Transportation分野の注目企業が上位に来ているのだが、1位のSumup Payments Limited(UK)を筆頭に、Financial Services系の企業の躍進が目立つことが1つの特徴といえよう。キャッシュレス・ビジョン(経済産業省)を打ち出す日本にとっては、参考となる企業のモデルが多数あることは是非知っておきたい。

 inc.5000はおそらくアジア版も今後発表されていくであろう(中国、インド企業の紹介を中心に)。いつの日か、本ランキングの「JAPAN版」が出来ることを、心底期待している。

次回予告

さて、今回はここまで。
 次回は、これからを考える上で欠かせない、新たな若き論客の紹介をしてみたいと考えている。
 乞うご期待!


<筆者紹介>
菊池 健司
株式会社日本能率協会総合研究所マーケティング・データ・バンク コンサルティングサービス部部長。
1990年日本能率協会総合研究所入社。マーケティング・データ・バンク(MDB)で長年に渡り、民間企業、官公庁、独立行政法人、大学等からの要請に応じ、公開情報を中心とした情報提供に携わる。現在は新規事業開発、新用途探索、ビジネスプラン策定といったテーマにおいて、情報コンサルタントとして個別企業や機関での支援活動に日々取り組んでいる。情報活用を通じて社員の発想を拡げることを目的とした研修の要望が急増している。