MDB COLUMN

ビジネスを成功に導くための視野/視点の拡げ方(2019/08/13)

「未来」を想起し、ビジネストレンドを先取りする<その3>

<本コラムの紹介>
 ビジネスを成功に導くためには、「いかに視野や視点を拡げていけるか」が極めて重要である。といっても、それほど簡単な話ではないことは皆さまもご存じの通りである。そこで本コラムでは、その方法論について、様々な考え方をお伝えしながら、紐解いていくことを目的としている。「他では読めない内容」となっているので、是非お楽しみいただきたい。



未来予測における必読書

よくセミナー等で来場者に紹介しているのが、以下の書籍である。

 ■「インテルの製品開発を支えるSFプロトタイピング」(ブライアン・デイビッド・ジョンソン著/安芸書房)
 URL:https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=542&kw=%E7%B4%B0%E8%B0%B7%E5%8A%9F

 インテルでは、10年後の社会全般の姿を専門に考えるチームを有している。同社の未来研究員である著者は、日本のSF(サイエンスフィクション)を参考に10年後を予測しているのだが、その考え方や手法が紹介されている実に興味深い書籍である。インテルの未来予測には、以下の考え方が根付いている。

 ●個別機能の追求→ユーザー利用場面の利便性追求
 ●個別製品の価値→様々な製品が有機的につながったエコシステムの価値
 ●「いまあるものから」の発想ではなく、「いまないものから」の発想が必要

 2013年6月の刊行であり既に6年以上が経過しているが、是非お読みになられることをお勧めしておく。未来は自ら自主的に創り上げていくという基本を思い起こさせてくれる、実にユニークな1冊である(こういう書籍こそ、手に入るうちに手に入れておきたい)。
 日本でも「未来予測」セクションは新設の動きがここ数年大ブームである(最近1ヶ月だけでも、実に多くの「未来予測」担当者と名刺交換を行った…)。実は、世界のトレンドウオッチャーは、日本の未来に熱い視線を送っている。未来のビジネスのヒントは実は日本にあると…。
 ちなみに上記書籍の著者は当時から、「未来を見たいのなら、日本に行くといい」とまで言い切っている。

 ・少子高齢化のトレンドは日本が世界に先んじて進む
 ・自動運転等のテクノロジーが都市化や過疎地にどう影響を与えるかが世界に先んじて見られる 等々

 こうした事象から見ても、日本への注目トレンドは今後当面続くと予想される。

我々が注目しておくべきは…

さて、未来の探索においては、やはり中国のトレンドをウオッチしなければならないだろう。近年、「中国製造2025」に関する単行本が日本でも多く刊行されるようになったことも1つの大トレンドである。
 そして中国のSF小説が日本でもヒットしていることに注目しておきたい。「三体」(劉慈欣著/早川書房)は中国で実に2,100万部以上(!)を突破した注目書であり、ついに(ようやく?)この2019年7月、日本にも入ってきた。
■「三体」(劉慈欣著/早川書房)
 URL:https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/shopdetail.html?brandcode=000000014259&search=%BB%B0%C2%CE&sort=

 フェイスブックのマーク・ザッカーバーグやアメリカのオバマ前大統領が愛読書として挙げたことでも話題となった。尋常ではない発行部数を誇る本書から、未来探索のヒントが得られる予感がしている(気分転換も兼ねて)。
 皆様もこの夏休みをうまく利用して、ご覧になられてみてはいかがだろうか。もちろん私もしっかりと読んでみたいと考えている。

次回予告

今回はここまで。
 中国トレンドをどう考えるかについては、非常に重要なテーマであり、次号でも取り上げることとする。引き続き、ご覧いただければありがたい。


<筆者紹介>
菊池 健司
株式会社日本能率協会総合研究所マーケティング・データ・バンク MDB事業部 部長。
1990年日本能率協会総合研究所入社。マーケティング・データ・バンク(MDB)で長年に渡り、民間企業、官公庁、独立行政法人、大学等からの要請に応じ、公開情報を中心とした情報提供に携わる。現在は新規事業開発、新用途探索、ビジネスプラン策定といったテーマにおいて、情報コンサルタントとして個別企業や機関での支援活動に日々取り組んでいる。情報活用を通じて社員の発想を拡げることを目的とした研修の要望が急増している。