MDB COLUMN

ビジネスを成功に導くための視野/視点の拡げ方(2021/02/01)

「未来」を想起し、ビジネストレンドを先取りする<その14>

<本コラムの紹介>
 ビジネスを成功に導くためには、「いかに視野や視点を拡げていけるか」が極めて重要である。といっても、それほど簡単な話ではないことは皆さまもご存じの通りである。そこで本コラムでは、その方法論について、様々な考え方をお伝えしながら、紐解いていくことを目的としている。「他では読めない内容」となっているので、是非お楽しみいただきたい。



緊急事態宣言発令と共に幕を開けた2021年

2021年1月8日から発令され、現在11都府県に拡がっている緊急事態宣言は3月7日までの1ヶ月間、延長される見通しとなった。正直なところ、昨春の第1回発令時と比較した場合、世の中の緊張感の緩さは否定できないと思うが、産業という観点からは「時間が止まってしまう」ことに懸念を感じている。
 2021年早々、経営計画の見直しを行っている企業は数多い。中期経営計画の前提となる事業環境そのものが、コロナショックによって変わってしまったのだ。コロナがもたらす混乱の渦中において、産業構造の変化もスピードが速まっている印象を受ける。2021年は後々振り返った際に、歴史に残る「リセット」イヤーとなることが想像に難くない。一度、自社のあり方を「リセット」して検討されることをお勧めしておく。もちろん自社の強みや良い部分を無理やりリセットする必要はないのだが、「座して嵐の通過を待つ」というわけにはどうやらいかなさそうだ。

大国のリーダーが変わる節目の1年

世界の経済に目を向けると、アメリカのリーダー交代がやはり大きなトピックとなる。正式に第46代アメリカ大統領に就任したバイデン氏の政策には注目しておく必要がある。コロナ封じ込めへの注力が最も重要な課題となると思われるが、クリーンエネルギー政策、気候変動対策等どのような手を打ってくるか、そこから大きな流れを読み取っていく必要があるだろう。早速取り組んでいるコロナ対策関連の報道やパリ協定への復帰の動き等を見ていると、火中の栗を拾うようなタイミングでの就任となったが、その動きは精力的に見える(接戦を制しての就任ゆえ、当然か…)。
 世界の覇権という観点では、長い目で見れば中国がリードしていく可能性が高いと見ているが、現在の世界No.1大国はアメリカであり、そこのリーダーが変わった「節目」というのはやはり注目せざるを得ない。Wall Street JournalやBloombergの記事は、日本の有力メディアと併せて、しっかり目を通しておく必要があるだろう。個人的には、海外と日本で報道の論点が「異なる部分」をピックアップして、その背景を常に考えるようにしている。

 ■Wall Street Journal
 URL:https://jp.wsj.com/

 ■Bloomberg
 URL:https://www.bloomberg.co.jp/

 産業の観点から見ると、こうしたグローバルメディアはTech系有力サイトと併せて、産業の変化や注目企業のピックアップに役立つことも多い。例えば最近、以下のような記事が掲載された。

■EV電池生産に群がる米企業、中国の牙城切り崩しへ/Wall Street Journal日本版(2021年1月27日付)
 URL:https://jp.wsj.com/articles/SB12680897664151644072104587245871465857682
 ※有料記事

 ここに出てくる「シラ・ナノテクノロジーズ」は今後注目スタートアップとなるだろう。 ただ日本ではまだまだ同社に関する報道は多くない。同社が注目される背景を多角的に見ていくと、日本におけるビジネスチャンスも浮かび上がってくる。1つの情報を呼び水として、「広げて」「つなげて」考えることが、今後より重要だと思う。

次回予告

今回はここまで。
 次号では、今後の注目ビジネスチャンスを紐解いていくキーポイントをお伝えする予定である。乞うご期待。


<筆者紹介>
菊池 健司
株式会社日本能率協会総合研究所マーケティング・データ・バンク MDB事業本部 副本部長。
1990年日本能率協会総合研究所入社。マーケティング・データ・バンク(MDB)で長年に渡り、民間企業、官公庁、独立行政法人、大学等からの要請に応じ、公開情報を中心とした情報提供に携わる。現在は新規事業開発、新用途探索、ビジネスプラン策定といったテーマにおいて、情報コンサルタントとして個別企業や機関での支援活動に日々取り組んでいる。情報活用を通じて社員の発想を拡げることを目的とした研修の要望が急増している。