MDB COLUMN

ビジネスを成功に導くための視野/視点の拡げ方(2020/08/31)

「未来」を想起し、ビジネストレンドを先取りする<その12>

<本コラムの紹介>
 ビジネスを成功に導くためには、「いかに視野や視点を拡げていけるか」が極めて重要である。といっても、それほど簡単な話ではないことは皆さまもご存じの通りである。そこで本コラムでは、その方法論について、様々な考え方をお伝えしながら、紐解いていくことを目的としている。「他では読めない内容」となっているので、是非お楽しみいただきたい。



コロナ禍…続く混乱と時代のターニングポイント

2020年8月28日、本コラム執筆中に「体調面を考慮して、安倍総理が辞意を固める」という一報が飛び込んできた。安倍総理といえば、つい先日、在任日数が歴代1位を記録したばかりである。
 2020年はコロナに始まり、ポストコロナの見通しもはっきりしないまま、どうやら年末まで行きそうな気配だが、日本は国家のリーダーが想定よりも早く交替するという事態にも直面することとなる。次のリーダーは果たしてどなたになるのか…。相当なリーダーシップと求心力が求められることは間違いない。
 本来、2020年は東京オリンピックパラリンピックイヤーとして記憶に残るはずが、別の意味での「ターニングポイントの1年」として、これから深く記憶されることになる。

ビジネスを見る視点

話題を変わるが、今年も毎年楽しみにしている企業ランキングデータが発表された。

 ■inc.5000
 URL:https://www.inc.com/inc5000/2020

 アメリカのスタートアップサイトであるinc.が毎年8月に公開している「とんでもない勢いで急成長している未上場企業5000社ランキング」である。定点観測することで、今の時代感がわかり、これから注目すべき企業を「青田買い」できる。是非時間を見つけて、眺めていただきたい。
 2020年版も興味深い企業が顔を揃えた印象である。ある意味、ほぼ予想通りだったのだが、やはり「ヘルスケア」「エネルギー」関連企業がランキングの上位に入ってきている。今後の時代の流れを反映してか、ソフトウェア系のユニークな企業が随分増えてきた点もポイントである。ちなみに、上位3社はいずれも40,000%を超える成長率を記録している(3年間成長率データ)。

 1位:OneTrust(アトランタ) 48,337%
 URL:https://www.onetrust.com/

 2位:Create Music Group(ロサンゼルス) 46,800%
 URL:https://createmusicgroup.com/

 3位:Lovell Government Services(ペンサコーラ) 40,899%
 URL:https://www.lovellgov.com/

 1位のOneTrust社は、プライバシー管理のテクノロジー企業であり、3位のLovell Government Services社はヘルスケアソリューション企業である。成長産業において、うまく時代の風を捉えている感がある。
 意外なのは2位のCreate Music Group社である。音楽配信/…いや、ミュージックテクノロジー企業と表現しようか、類似のサービスは他にもありそうだが、なぜ同社が並みいるライバルを尻目に40,000%成長を達成することができたのかに大変関心がある(もちろんビジネスモデルを入念に調べてみたいと考えている)。

 成長ビジネスの中でも「突き抜けた」伸びを示していることは当然注目に値する。「海外メディア」で、こうした企業の成長の要因を探っておくことは、業種業界に関わらず有益なことだ。同業種から見れば飛躍のヒントが得られるし、異業種から見てもライバルが気付いていない新たなビジネスモデルを先取りできる可能性が出てくる。
 前号で、CNBC DISLOPTER 50をご紹介したが、こうしたこれから様々な業界に風穴を開ける、コロナ禍をビジネスチャンスに転じた企業をしっかりチェックしておくことが、間違いなく必須となるであろう。

次回予告

今回はここまで。
 次回も、inc5000.から注視すべき話題をお伝えする予定である。皆様ご自身でも是非予習しておいていただきたい。


<筆者紹介>
菊池 健司
株式会社日本能率協会総合研究所マーケティング・データ・バンク MDB事業本部 副本部長。
1990年日本能率協会総合研究所入社。マーケティング・データ・バンク(MDB)で長年に渡り、民間企業、官公庁、独立行政法人、大学等からの要請に応じ、公開情報を中心とした情報提供に携わる。現在は新規事業開発、新用途探索、ビジネスプラン策定といったテーマにおいて、情報コンサルタントとして個別企業や機関での支援活動に日々取り組んでいる。情報活用を通じて社員の発想を拡げることを目的とした研修の要望が急増している。